捻挫をしたときの応急処置とは?~RICE処置からPEACE & LOVEまで、現在の考え方を解説

セルフケア・生活改善

足首をひねったとき、
「とりあえず冷やしておこう」
「しばらく安静にしておけば大丈夫」
そう思った経験はありませんか?

実際に、捻挫の応急処置として「RICE処置」は長年世界中で行われてきました。

しかし近年、スポーツ医学やリハビリテーションの研究が進み、応急処置の考え方も少しずつ変化しています。

現在では、「PEACE & LOVE」という新しい考え方が提唱され、単に痛みや腫れを抑えるだけではなく、「組織がより良く回復するためにはどうすればよいか」が重視されるようになりました。

とはいえ、「今までのRICE処置は間違いだった」というわけではありません。
それぞれの役割を理解し、状況に応じて適切に使い分けることが大切です。

今回は、捻挫とはどのようなケガなのかという基礎から、RICE処置、そして現在のPEACE & LOVEまで、最新の考え方をわかりやすく解説していきます。

捻挫とは?まず知っておきたい関節のしくみ

捻挫とは、関節に強い力が加わり、靭帯(じんたい)が伸びたり、一部または完全に損傷した状態をいいます。

靭帯とは、骨と骨をつなぎ、関節が必要以上に動かないよう支えている組織です。
例えば足首では、

  • 足首が内側へひねられる
  • 靭帯が急激に引き伸ばされる
  • 靭帯の線維が傷つく

という流れで捻挫が起こります。

軽いものでは靭帯が少し伸びる程度ですが、重症になると靭帯が完全に切れてしまうこともあります。
また、捻挫と思っていても、実際には骨折や腱の損傷を伴っているケースも少なくありません。

そのため、

  • 強く腫れている
  • 歩けない
  • 関節が変形している

このような場合は、自己判断せず医療機関を受診することが大切です。

応急処置はなぜ必要なのか?

捻挫をすると、多くの方は「痛みを何とかしたい」と考えます。
もちろん痛みを和らげることも大切ですが、応急処置の本来の目的はそれだけではありません。

応急処置には、

  • 損傷をこれ以上悪化させない
  • 腫れを必要以上に広げない
  • 回復しやすい環境を整える

という大切な役割があります。
応急処置が適切に行われることで、その後の治り方や競技復帰までの期間にも影響することがあります。
だからこそ、「とりあえず冷やす」だけではなく、正しい知識を持って対応することが重要なのです。

長年行われてきた「RICE処置」とは?

捻挫などの急性外傷に対して、長年標準的な応急処置として行われてきたのがRICE処置です。
RICEとは、次の4つの頭文字を取ったものです。

Rest(安静)

患部をできるだけ動かさず、損傷の悪化を防ぎます。

Ice(冷却)

患部を冷やし、痛みや腫れを抑えることを目的とします。

Compression(圧迫)

テーピングや包帯などで適度に圧迫し、腫れを抑えます。

Elevation(挙上)

患部を心臓より高い位置に保ち、腫れを軽減します。

このRICE処置は現在でも応急処置として広く知られています。

しかし近年では、「炎症を抑えることだけが最善なのか」という点について、新たな研究が進められるようになりました。
その結果として提唱されたのが、PEACE & LOVEという考え方です。

現在は「PEACE & LOVE」という考え方へ

近年のスポーツ医学やリハビリテーションでは、捻挫や肉離れなどの軟部組織損傷に対する考え方が少しずつ変化しています。

その背景にあるのが、「炎症は悪いもの」という従来の考え方の見直しです。

以前は、炎症をできるだけ早く抑えることが回復につながると考えられていました。
しかし現在では、炎症は傷ついた組織を修復するために必要な自然な反応であることがわかってきています。

炎症が起こることで、

  • 損傷した組織を取り除く細胞が集まる
  • 新しい組織を作るための細胞が働き始める
  • 修復に必要な栄養や成長因子が運ばれる

など、回復に欠かせない働きが始まります。

もちろん、炎症が強すぎることで痛みや腫れが大きくなることもあります。
しかし、必要以上に炎症を抑え込みすぎることが、かえって組織の修復を遅らせる可能性も指摘されるようになりました。

そこで提唱されたのが、PEACE & LOVEという考え方です。

これは受傷直後の応急処置だけでなく、回復からスポーツ復帰までを一つの流れとして考える新しいガイドラインです。

PEACEとは?受傷直後に行う応急処置

PEACEは、受傷直後から数日間に行う対応をまとめたものです。

P:Protect(保護)

まず大切なのは、傷ついた組織をこれ以上悪化させないことです。

受傷直後は無理に歩いたり運動を続けたりせず、患部を保護します。

ただし、ここでいう「保護」は何日も完全に動かさないことではありません。
痛みを悪化させない範囲で日常生活を送りながら、損傷した組織を守ることが目的です。

E:Elevate(挙上)

患部を心臓より高い位置へ保つことで、余分な腫れを軽減しやすくなります。
横になる場合は、クッションや枕などを利用して足を少し高くするとよいでしょう。

A:Avoid anti-inflammatory modalities(抗炎症薬や過度なアイシングを避ける)

ここがPEACE & LOVEで最も大きく変わったポイントです。

これまで捻挫では「とにかく冷やす」ことが当たり前と考えられてきました。
しかし現在では、炎症は組織を修復するために必要な反応であることがわかってきています。

炎症によって修復に必要な細胞が患部へ集まり、新しい組織が作られていきます。
そのため、長時間アイシングを続けたり、炎症を必要以上に抑えたりすることが、回復を遅らせる可能性も指摘されています。

では、アイシングはもう必要ないのでしょうか。
答えは「そうではありません」。

アイシングには、

  • 一時的に血流を抑える
  • 痛みを感じる神経の働きを弱める
  • 強い腫れが広がるのを抑える

というメリットがあります。

そのため、
受傷直後で痛みや腫れが強い場合には、短時間のアイシングは有効です。
目安としては、

  • 約10分程度冷やす
  • 20分ほど間隔を空ける
  • これを1〜2回程度繰り返す

くらいで十分でしょう。

基本的には受傷後6時間程度までをひとつの目安と考え、それ以上長時間冷やし続ける必要はありません。

また、

  • リハビリで患部を動かしたあと
  • スポーツ後に痛みが強く出たとき

など、一時的に炎症や痛みを落ち着かせたい場面でも、短時間のアイシングは役立つことがあります。

つまり現在は、
「アイシングをする・しない」ではなく、「必要な場面で、必要最小限に行う」という考え方へ変わってきています。

C:Compression(圧迫)

弾性包帯やテーピングなどで適度に圧迫することで、腫れを抑え、患部を安定させる効果が期待できます。

ただし、強く巻きすぎると血流が悪くなったり、しびれが出たりすることがあります。
圧迫したあとに、

  • 指先が紫色になる
  • 強いしびれが出る
  • 冷たくなる

ようであれば、すぐに緩めましょう。

E:Education(正しい知識を身につける)

最後のEは「教育」です。

少し意外に感じるかもしれませんが、正しい知識を持つことも治療の一部と考えられています。

インターネットには、
「絶対に冷やした方がいい」
「すぐ温めた方がいい」
など、さまざまな情報があります。

しかし、ケガの状態は一人ひとり異なります。

自己判断だけで対処せず、必要に応じて専門家の判断を受けながら回復を進めていきましょう。

LOVEとは?回復期は「適切に動かす」ことが大切

受傷直後の「PEACE」の段階を過ぎ、痛みや腫れが落ち着いてきたら、次はLOVEの考え方へ移っていきます。

以前のように「痛めたところは、できるだけ長く安静にする」という考え方ではなく、現在は状態を確認しながら適切な負荷を少しずつ加えていくことが重要とされています。

ただし、「早く動かした方がいいから」と無理をするわけではありません。

組織の回復状態を見ながら、日常生活、運動、スポーツ復帰へと段階的に戻していくのが基本です。

LOVEは、次の4つの頭文字からできています。

L:Load(適切な負荷)

捻挫をすると、痛みが怖くて患部をできるだけ動かさないようにしてしまいがちです。
もちろん、受傷直後に無理をする必要はありません。

しかし、長期間まったく動かさない状態が続くと、関節の動きが悪くなったり、筋力が低下したりすることがあります。

そこで、痛みや腫れの状態を確認しながら、少しずつ患部へ負荷を戻していきます。

足首の捻挫であれば、状態に応じて、

  • 足を床につける
  • 少しずつ体重をかける
  • 歩行へ移行する

といったように、段階的に負荷を増やします。

適切な力が組織に加わることは、靭帯や筋肉などが再び負荷に耐えられる状態へ回復していくうえでも重要です。

ただし、強い痛みが出る、腫れが明らかに増えるといった場合は負荷が強すぎる可能性があります
「我慢して動かす」のではなく、その日の状態を確認しながら調整しましょう。

O:Optimism(前向きに回復へ取り組む)

LOVEには、身体的な処置だけではなく心理的な要素も含まれています。

ケガをすると、

「また痛めるのではないか」
「以前のように動けなくなるのではないか」

と不安になることがあります。

特にスポーツをしている方では、再受傷への恐怖から必要以上に患部をかばってしまうこともあります。

もちろん、「前向きに考えればケガが治る」という単純な話ではありません。

必要以上にケガを怖がるのではなく、回復の段階を理解しながら「できること」を少しずつ増やしていくとよいでしょう。

当院でも、痛みがなくなっただけでは不安が残り、「本当に走っていいですか?」「また捻挫しませんか?」と相談されることがあります。

こうした場合も、いきなり元の運動へ戻すのではなく、関節の動きや筋力、片足での安定性などを確認しながら段階を踏むことで、安心して復帰しやすくなります。

V:Vascularisation(血流を促す)

痛みや腫れが落ち着いてきたら、患部に負担をかけすぎない範囲で体を動かすことも大切です。

ウォーキングや自転車など、その時点で可能な運動を取り入れることで、全身の血流を促します。

ただし、ここでも重要なのは「痛みを我慢して運動しないこと」です。

足首の捻挫で歩くと強く痛むのであれば、無理にウォーキングをする必要はありません。
ケガをしている場所や程度によって、できる運動は変わります。

患部だけを見るのではなく、できる範囲で全身の活動量を少しずつ戻していくと考えるとよいでしょう。

E:Exercise(運動)

LOVEの最後は「Exercise」、つまり運動です。

捻挫は、痛みがなくなれば治療終了というわけではありません。

特に足首の捻挫では、関節の動きや筋力だけでなく、バランス能力や足首の位置を感じ取る感覚などが十分に戻っていないことがあります。

痛みだけを基準にスポーツへ復帰すると、再び同じ場所を捻ってしまう原因にもなります。

回復に合わせて、

  • 関節の可動域を戻す運動
  • 足首やふくらはぎ周辺の筋力トレーニング
  • 片足立ちなどのバランストレーニング

などを段階的に取り入れていきます。

スポーツをしている方であれば、その後さらに、走る・止まる・ジャンプする・方向転換するといった競技動作へ進みます。

「痛くない」から「以前と同じように動ける」まで戻すこと。

ここまで考えるのがLOVEにおけるリハビリテーションです。

また、足首の捻挫では、一度痛めたあとに「捻挫癖」がついてしまうこともあります。再発予防では、リハビリだけでなく、必要に応じてサポーターなどで関節を補助する考え方もあります。

足首の捻挫を「癖」にしないために|再発予防とサポーターの正しい使い方

RICEとPEACE & LOVEは何が違う?

ここまで読むと、
「結局、RICE処置はもうやらない方がいいの?」と思う方もいるでしょう。

大きな違いは、ケガをした直後だけを見るのか、その後の回復まで含めて考えるのかという点です。

RICEでは、
Rest(安静)・Ice(冷却)・Compression(圧迫)・Elevation(挙上)によって、受傷直後の痛みや腫れを抑えることが重視されていました。

一方、PEACE & LOVEでは、受傷直後は損傷を悪化させないよう保護しながらも、炎症を必要以上に抑え込まず、その後は適切な負荷や運動へ移行することを重視しています。

つまり、「冷やして安静にする」だけで終わらせず、その後どのように動きを取り戻していくのかまで考える。

ここが大きな違いです。

RICEで行われてきた圧迫や挙上などが、すべて否定されたわけでもありません。

ケガに対する知見が蓄積され、応急処置から回復までをより長い視点で考えるようになったと理解するとわかりやすいでしょう。

捻挫をした直後にやってはいけないこと

捻挫をした直後は、「早く治したい」という気持ちから、さまざまなことを試したくなるかもしれません。

しかし、受傷直後は損傷した組織をさらに傷つけないことが優先されます。

特に注意したいのが、痛みを我慢して動き続けることです。

スポーツ中に足首をひねり、「まだ動けるから大丈夫」とそのまま競技を続けると、損傷を悪化させる可能性があります。

また、受傷直後に患部を強く揉んだり、無理にストレッチしたりすることも避けましょう。

入浴や飲酒などによって血流が大きく変化することもあるため、腫れや熱感が強い時期は状態を見ながら慎重に判断する必要があります。

反対に、何日も完全に動かさないことが常に正しいわけでもありません。

大切なのは、
「無理に動かす」か「ずっと安静にする」かの二択ではなく、損傷の程度に合わせて適切な時期に適切な負荷へ移行することです。

「ただの捻挫」と自己判断しないことも大切

足首をひねったからといって、必ずしも靭帯だけが傷ついているとは限りません。

実際の施術現場でも、「軽い捻挫だと思っていた」と来院されても、状態を確認すると骨折などを疑い、医療機関での検査を勧めるケースがあります。

特に、

  • 足をつくことができない、数歩も歩けない
  • 骨の一部分を押したときに強い痛みがある
  • 腫れや内出血が非常に強い
  • 関節の変形がみられる
  • しびれや感覚異常、足先の冷たさがある
  • 数日経過しても痛みや腫れが改善しない

といった場合には注意が必要です。

骨折や重度の靭帯損傷、腱の損傷などが隠れている可能性もあるため、自己判断で様子を見続けず、整形外科などの医療機関で適切な評価を受けましょう。

また、子どもの場合は、靭帯ではなく成長期の骨に損傷が起こることもあります。

「歩けるから骨折ではない」とも限りません。

症状が強い場合や判断に迷う場合は、早めに専門家へ相談しておくと安心です。

「整形外科と接骨院はどう使い分ければいいの?」と迷う方は、接骨院・整骨院・整体院の違いについてこちらの記事でも整理しています。

体を治すにはどこに行けばいいの?【接骨院・整骨院・整体院】意外と知らない治療院の選び方を解説します

まとめ|捻挫は「冷やして安静」だけで終わらせない

捻挫などの急性外傷に対する考え方は、研究の進歩とともに変化しています。

長年知られてきたRICE処置では、安静・冷却・圧迫・挙上によって、受傷直後の痛みや腫れを抑えることが重視されてきました。

現在提唱されているPEACE & LOVEでは、そこからさらに一歩進み、炎症も組織修復に必要な反応のひとつとして捉え、必要以上に抑え込まず、その後の適切な負荷や運動まで含めて回復を考えます。

アイシングについても、「絶対に冷やす」「絶対に冷やさない」と考える必要はありません。

痛みや腫れが強い受傷直後など、必要な場面では短時間使用し、長時間・長期間にわたって習慣的に冷やし続けない。

アイシングは、目的とタイミングを考えて使うことがポイントです。

そして、捻挫は痛みが引いたところで終わりではありません。

関節の動きや筋力、バランス能力などを段階的に取り戻し、日常生活やスポーツで再び問題なく動ける状態まで回復させることが再発予防にもつながります。

当院では、捻挫した場所だけを見るのではなく、関節の動きや筋力、歩き方、体全体のバランスなども確認しながら、その方の状態に合わせた施術や回復の進め方をご提案しています。

「いつから動かしていいかわからない」「痛みは減ったけれど運動に戻るのが不安」という場合も、状態を確認しながら復帰の段階を決めていくと安心です。

当院の施術や考え方について詳しく知りたい方は、「初めての方へ」のページもあわせてご覧ください。
初めての方へ

監修者名
ほっと鍼灸接骨院 管理柔道整復師
鈴木 拓郎

生年月日:1987年5月25日 
出身地:千葉県千葉市
学歴:帝京平成大学ヒューマンケア学部卒
   帝京平成大学大学院 柔道整復学専攻 修士課程修了
資格:柔道整復師
   スポーツ整体ボディケアセラピスト
   中学・高校教諭一種免許状(保健・体育)

大学院で骨盤、骨盤の調整に関する研究をしていました。
その研究成果である骨盤調整を自院での施術に活かしております。

骨盤から起こる体の不調が得意ですが、プロスポーツ選手などの施術経験もあり、幅広い分野で体の不調に対応できます。

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